救出技術シリーズF01 
FDの物理的な故障への対応法


1 水濡れ

 小生の所へは時々、お茶やコーヒー・コーラなどの飲み物をこぼして読めなくなったFDが届きます、またある時は、地震による津波で塩水を被ってしまったというFDが大量に届けられたこともあります。

 これらはFDの外殻(シェル)の内側に張ってあるガーゼ状の布が水を含んで中のドーナツ盤を吸着する結果、回転できなくなるのが原因です。これを隙間からドライヤーをかけたりして乾燥させても、今度はこびり付いて回転しないこともあり、無理やり動かして傷付けてしまうと、後はどうやっても読み出せない最悪の事態に陥ります。先ず、
濡れたら絶対に機械に掛けないことが肝心です。

 この場合の正しい対処法は、濡れたケース(ジャケット、シェル)から中の磁気円盤を取り出し、それを洗浄・乾燥の後、別のケースに入れ替えて、複写を取ればいいのですが、この作業の中では、ケースを開くことが肝心の技術になります。これには色んなやり方がありますが、経験上一番簡素でお勧めできるのは、FDの口金(シャッター)のついていない方(お尻の方)の2隅にカッターナイフを差し込み、貝柱のような接着部(左図赤マークの位置)を切り離して、メディアを取り出すやり方です。簡単に外れる場合もあり、接着部が強くて角がチギレてしまう場合もあります。このケースは後は使いませんので、要は中の記録媒体を傷つけないように取り出すことです。
読み出し用の別のケースを作るのも同じやり方です。但し、今度はきれいに剥がれないとまずいですね。中身を入れ替えて、お尻が多少開き気味の場合はセロテープで止めて、機械に掛け、コピーを取ります。

 余談ながらFDの左右の下隅にある穴の役割は、左はスライドで書込みのプロテクト-ノンプロテクトの切り替え、右は穴があれば2HD・なければ2DDの識別孔です。FDドライブにはセンサーがあり、左右の穴が開いているか閉じているかを感知して識別します。

-1 空回り

 最近は減りましたが、フロッピーディスクを床に落としたら、読み書き出来なくなったというような緊急電話をタマにいただきます。不思議ですねェ、落としたらデータが飛ぶんですかね?最初は筋道がわからなかったのですが、実物を手にしてすぐに合点がいきました。そのFDは中心の金属円盤とその外側のドーナツ盤とが分離していたのです。多分接着剤が老化して脆くなっていたところへ落下の衝撃がきて、一気に剥がれてしまったのです。これを掛けても中心軸の駆動がドーナツ状の記憶部分に伝わらないので、当然データの読み書きが出来ないという結果になります。古いFDを長年に渡り使い込んでいる人に起きやすい事故ですから、毎年バックアップし直して、その新しい方のFDを使うようにしたら予防になります。

 FDドライブから 「シャーシャー」音がするので、剥離に気が付く時があります。確認法としては、シェルをグッとつまんでメディアが回転しないようにした状態で、真中の金属円盤をまわしてみて、動くか動かないかで判断できます。

 さて、日本中でこんな故障の修復をやっているのは、多分当店だけではないでしょうか?この場合メディアを取り出して、中心金具と磁気円盤との仮止めと読み取りチェックを繰り返し、リング状のデータに対する元の中心を求めなおす必要があります。何度でも貼りなおせ、糊が散らないように小生は次のように工夫してやっています。

 FDを分解すると、中心金具かドーナツ盤の内側の縁かのどちらかに、小さいリング状のフィルムがついています。これを剥ぎ取って、両面に版下用のスプレーのりを掛けて、貼り付けなおします。ドーナツ盤の内径が多少大きく、アソビがあるのでどこに貼ればよいのかずいぶん苦労します。これは按摩のツボ学習のようなもので、修行して会得するしかありません。、頭を使って多少要領よくやることはできます。修行と要領の結果、小生は百発百中で元の位置を割り出すことができます。フロッピーから取り出さないで、真中からアロンアルファーを流し込んだなんていう豪傑もいましたが、これはいけませんヨ。


2-2 全トラックの読み取り不良・データ不良

 
最近は、空転はしていなくて、冒頭から末尾までフォーマットが無いFDが来ます。正常なトラックが1本もない状態です。この一歩手前では周期的に読み取り不良セクター群がある場合もあります。特徴的な現象はFDの表裏の区別無くエラーが起きること。ユーザーは使用中のある時、突然読めなくなったと言います。ディスク表面にキズはなく、ハブとディスクの接着も外れていません。
 この原因はなんでしょうか?「
磁石の影響でデータが狂った」と知ったかぶりをする人がいますが、そうではありません。これはハブ(中心の金具)とディスクの接着がズレてディスクが偏心して回転しているために、トラックがヘッドの読取り許容範囲から外れて発生するものです。接着剤が硬化しないタイプのホットメルト系接着剤の場合に起きます。これは以前はS社のFDだけでしたが、最近はこの接着剤が主流になって、どこのメーカーのFDでも起こり得る現象です。⇒「フロッピーディスクの加熱テスト」へ
 対応方法はドライヤーの熱風を当てて接着剤を軟化させて、ディスクとハブの位置を微細にズラし、正しく読める位置を求めて読取りテストと再ズラシの試行錯誤をすること。
このエラーを予防するには、熱くなる場所にFDを置かないこと。
 さらに付言すれば、MOでもこれと同様に大幅に読み取れない領域が周期的に現れたり、全く読み取れなかったりの症状があります。初期のMOドライブ装置では互換性に難点があり、いわゆるドライブのクセがあり、この現象がおきるものと考えています。


 口金はずれ、口金ひずみ


 以上の2例のほかに、口金(シャッター)が外れてしまったがどうしたらいいか?(または、シャッターのバネが外れた)というお問い合わせもあります。FDは口金無しでも読み取れるので、口金を取り払って機械に掛けてみて、読めるようなら、直ぐに他のFDにコピーしても良いし、口金取り付け部の構造を研究して、付け直しても良いですね。右図はカッターを差し込んでシャッターを外しているところ。本体側の赤印位置にバネのがあるので、それを持ち上げシャッター金具の赤印位置にある突起に掛ける。

4 

 レコード盤と同じように、メディアを物理的に傷つけてしまうことがあります。
 ドライブ装置の読み書きヘッドが故障して、メディアが同心円状に削りとられてしまう傷が一般的ですが、一度は放射状にカッターを入れたような傷が何本もはいったものを見ました。こちらは通常の動作でどうしてこうなるのかがわかりません。不心得者がわざと傷つけたのでしょうか?
 [対処法] 同心円状の傷の場合は、そこを避けて複写をとり、次に読み飛ばしたところに正常なFDから構造を複写して整合性をとり、ノートンやその他の修復ツールを使うことになります。装置メーカでもあるYE-Dataさんでは傷ついたFDには接触しないで、レーザーで読み取るドライブを使っているそうです。
 放射状の傷の場合は、トラックごとに毎回音飛びするようなものなので、きずがかかっている範囲はまず直せません。

5 折れ曲がり


 3.5インチのFDではまず起こりませんが、むかしの5インチのFDでは、机の引出しに入れていて、折れ曲がったということがありました。
折れ目があると、1回転するごとにその部分でヘッドが跳ね上げられてしまうので、正常にデータが読み出せません。
 これも折れ目を平らにできない限り復活できませんから、復活はまず無理でしょう。

 以上で、物理的な故障のセクションを終わり、次にフォルダ
構造に立ち入ってのソフト的な修復の事例についておしゃべりします。
(2010/1/30)


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